瞑想つれづれ日記⑮ 満腹の旅

瞑想つれづれ日記①-

友を見舞った。

緩和ケア病棟を退院し、彼女は今
自宅とは別の海の見えるマンションで
夫婦水入らずの最期の時を穏やかに過ごしている。

その場所からは
天気の良い日には遠くにうっすら富士山が望める。

医師や看護師、マッサージ師などの定期的な訪問を受けながら
週末の子どもたちとの団らんや車椅子での散歩を楽しみ、
時々は旅行にも出かける。

案外普通に、むしろアクティブに暮らしている。

酸素吸入器の管をズルズルと引きずりながらではあるが、
台所にも立ち、ご主人に野菜の切り方などを伝授している。

「もう、信じられないくらい何にもできないのよぉ。」と愚痴を言いながら
ご主人はご主人で「もう、わがままでねぇ。まるで女王様ですよ~。」と笑う。

自然体で仲の良い二人の姿を見せてもらい、
私の問題については
夫婦それぞれ忌憚のない意見を
はっきりと、そして優しく伝えてもらった。

片方がいない時
二人はそれぞれ私に気持ちを語った。

友は
「私がいなくなったら彼が困るから。今のうちに伝えておかないと。」

ご主人は
「いろいろと苦労もさせてかわいそうだったと思う。
でも、生来の彼女の楽天性に助けられたよ。
それに、彼女は自分がブレないんだ。」

彼女の体調を思うと初めは躊躇したが、
彼女の希望で見舞いに出かける決心をした私だった。

故郷の土産をたくさん食べてもらおう。
楽しい時を作ろう。
そう思って彼女を訪ねた。

だけど結果的に
私のほうが有形無形のたくさんの土産をもらってしまった。

「何回生まれ変わっても
この人と結婚したいと思えるってしあわせなこと」
彼女には堂々とのろけられた。

そののろけさえも
私の土産になった。

たくさんのものを与えてもらい
心穏やかな満腹の旅となった。

友よ
私もあなたと出会えて幸せだったよ。

私はこれまであなたに何を差し出してこれただろう。
感謝してもしきれない。

しかし、実を言うと
私は彼らの
いわばキューピットに近い存在なのである。

それだけは私の自慢かもしれない(笑)

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